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東京高等裁判所 昭和44年(く)441号 決定 1969年12月02日

少年 Τ・I(昭二六・五・一四生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨理由は少年の実父名義の抗告申立書記載のとおりであり、その要旨は、原決定の処分は罪となるべき事実につき共犯関係にある他の者に対する処分に比し公平を失して著しく不当であるからその取消を求めるというものである。

本件保護事件記録によれば、本件事案は少年が昭和四四年九月○○日○町の秋祭に際し、M・T(当二一年)等約一〇名と共同し町会役員等の制止を却けて小中学生等の担いでいた神興を強いて取上げ激しく揺つたり、M・Tがその上に飛び乗つたりしたうえ路上に投げ出して損壊し、警察官が主犯M・Tを逮捕しようとするや、これを阻止妨害するためにその警察官の両手を掴んで押しつける等の暴行を加えたものであり、現場において少年を含む六名が現行犯人として逮捕され、うちΜ・T等四名は成人であるため刑事々件として処置され、少年及びZ・R(当一九年)の両名が少年保護事件として家庭裁判所に送致された経過が認められる。所論は他の共犯者の処分に比し少年に対する処分が不当というが、刑事々件と少年保護事件とはその手続のみならず趣旨目的を全く異にするから、その処分結果を比較することは失当であり、本件の場合少年の処分と比較の対象になり得るのはZ・Rの処分のみである。両名の本件犯罪事実について見ると暴力行為等処罰に関する法律違反の点については、Z・Rは当日共犯者の仲間と行動を共にしてはいたが、神興を取上げる行動に出る直前に居合せた友人によつて制止され実際行動には手を下していず、公務執行妨害の点については関与していなのに対し、少年は児童から神興を取上げて手荒くこれを揺る等の行動に積極的に参加し、警察官の逮捕妨害については主犯的行動に出ているのである。また両人の前歴を見るとZ・Rは従前非行の故に保護処分に付されたことがないに対し、少年はその少年調査記録によれば、昭和四二年二月一八日審判不開始の決定は受けたものの兇器準備集合罪により家庭裁判所に送致され、更に昭和四四年二月一三日傷害罪により保護観察に付されており、本件に対する両名の処分に差等のあることはむしろ当然である。殊に少年は担当の保護観察官、保護司の指示補導に従わず、居住地域のチンピラヤクザと言われる不良分子との接触交遊を断たず毎夜の如く喫茶店等にたむろする生活状態を続け、両親はいずれも少年のこのような生活行動を知りながら放置し、却つて保護担当者に対し反感を示しこれに協力しようとする姿勢が見られない。少年の家庭環境は、少年を家庭に置いてその保護者の真摯な協力によつて少年を社会生活に適応させるべく補導育成することを目的とした保護観察に適しないことを示しているのである。原決定が少年を中等少年院送致の言渡をしたことは相当であつて、徒らに他の少年に対する処分と比較して不当と論議する所論は理由がない。

以上のとおり本件抗告はその理由がなく少年法二三条一項によつてこれを棄却すべきであるから、主文のとおり決定する

(裁判長裁判官 関谷六郎 裁判官 寺内冬樹 中島卓児)

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